諏訪市大手の剣道・居合道の道場「諏訪尚武館」は27日、「開館100周年記念式典」を道場で開く。1925(大正14)年に発足して1世紀。県内でも、長い歴史を持つ道場の一つという。入門者は諏訪地方を中心に3000人を超え、剣道・居合道を通して心技体を鍛えてきた。節目を機に武道の精神や技術の継承に加え、礼節の重視など人間形成にも一層努めていくとしている。
同館によると、始まりは武道家中山博道の一言だったという。「日本第一大軍神を祭る諏訪大社のお膝元に剣道の道場がないのは残念。私が応援するから道場を建てなさい」。言葉を聞いた初代館長の土橋由衛さんが、私財を投じて大手に道場を建設した。
長い歴史の中では存続の危機が何度かあった。太平洋戦争中には鉄路保護のため、沿線建物の取り壊し命令が出された。そこで近くの畑まで道場を曳き、難を逃れたという。建物はその後、沿線に戻された。
連合国軍総司令部(GHQ)から一時剣道が禁止されたこともあった。そこで尚武館は諏訪に進駐していた米兵を道場に招待。土橋館長がバイオリン、家族がピアノなどを弾き、「ケンタッキーの我が家」などを演奏するなど音楽でもてなした。翌日には剣道を披露し、道場継続の了承を得たという。
これまで館生として幼児から一般まで受け入れてきた。昭和50年代前半は子どもの部門だけでも週4回の稽古があるほど盛んだった。少子化の波を受けて館生は減少しているが、道場では剣術の上達を目指して、気合のこもった鍛錬を積んでいる。先輩の館生が後輩に教えるなど技の伝承に力を入れている。
初代館長のおいで二代館長を務めた土橋道治さんから受け継いだ三代館長の近江誠一さん(88)は、入門して60年以上。初代館長らの教えから、剣道を通して人を育てることが大切だとの思いを強く感じてきたという。「剣道を通して次の日本を背負って立つ子どもを育てたい」と話している。
記念式典は27日午前10時から開き、これまでの歩みの振り返りや表彰、記念演武などを計画している。演武では尚武館の師範や子どもたちが剣道や居合の技を披露する。式典の様子も収めた100年史の発行も予定している。
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