JA信州諏訪は野菜、花きの出荷本番を迎えて、市場への売り込みに本腰を入れている。地元農家は近年、肥料や資材の値上がりで経費が増している半面、生産物の小売価格は「この数十年、ほとんど変わらず」(菊池孝明営農部長)経営圧迫の苦境が続いている。この状況を打破する一歩として今夏、初めて茅野、原、富士見3市町村の首長も合同参加して京浜市場でトップセールスを展開。市場や仲卸業の関係者らに適正価格での取り引きに理解を求めながら、豊富な品目と質の高さをPRして需要拡大を目指している。
諏訪産の農産物は京浜市場に6割、地元と中京、関西、九州に4割を出荷。レタス、セロリ、パセリ、菊、トルコキキョウ、カーネーションなどでブランドを確立し、夏場の市場シェア全国トップを誇る品目もある。
近年は全国の他産地同様、夏場の高温気候に苦労してはいるものの、標高の高さと栽培経験の豊かさを武器に主力品目を守りつつ多品目化も進め、野菜は25品目以上、花は14品目以上を柱とする。豊富な種類かつ品質、数量とも安定した供給で市場の高い信頼を得ているという。
とはいえ、コロナ禍に続く世界的な情勢の変化や円安の影響で肥料やマルチシート、包装用資材は5年前に比べて1.4倍~1.5倍(6月25日現在)、農薬は商品によっては1.8倍にもなるなど資材費は軒並み跳ね上がり、農家の利益率は大きく下がっている。同農協では今年度、価格の適正化を第一に掲げ、野菜は販売価格で前年度計画比6.75%増の45億円、花は4.11%増の20億円、計約3億8000万円の増収を達成させる構えだ。
トップセールスは今月13、14日に行い、小平淳代表理事組合長ら農協幹部と今井敦茅野市長、名取重治富士見町長、牛山貴広原村長が市場を訪問。イベントにも参加して「暑さに負けない総合供給産地」をアピールし、懇談の席では「供給責任に対する適正価格での販売」を訴えた。
同農協によると、セロリを試食した仲卸業者からは「甘く柔らかくてとてもおいしい。高く売ります」、市場関係者からも「生産者に作って良かったと思ってもらえるよう、気を引き締めて販売していく」などの声が聞かれ、「自治体を挙げて熱を込めたPRは効果が強力」(菊池部長)。今後は農協の営業体制も強化して「全国に向けてきめ細かく売り込み、新規顧客を開拓したい」としている。
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