2024年5月31日付

2024/05/31 06:00
八面観

梅雨入りの予想はまだ先だけれど、何だかじとじとした天気が増えてきた。週明けには衣替えだ。ついこの間まで桜の写真が紙面を彩っていた気がするが…。年齢を重ねるに連れ、季節が足早に過ぎていくように感じる▼この時期は、特に緑がいい。山も里も木々の葉は色の深みを増し、田んぼには早苗のじゅうたんが広がる。松尾芭蕉は初夏の木漏れ日に神秘性を感じたらしい。東北への道中、参拝した日光東照宮で「あらたふと(ああ尊い) 青葉若葉の 日の光」と詠んでいる▼一方でこちらの緑はあまり喜ばれない。所構わず繁茂する草花。いわゆる「雑草」だ。通勤に使う道路の両脇には壁のように生い茂る。地区の出払い作業では刈って、集めて、運んでと大忙し。猫の額ほどしかないわが家の庭でも、晩秋までの長い格闘が始まった▼ただそんな厄介者も、視点を変えれば打たれ強さと生命力の象徴だ。プロ野球の巨人や米大リーグで投手として活躍した上原浩治さんは、高校時代は控えの選手で大学受験にも失敗。それでも不屈の「雑草魂」を胸に過去を乗り越え、球界のエースまで上り詰めた▼さて、自身の怠惰な生活を省みる。時間の流れが速いと感じるのは、果たして加齢のせいだけなのか。毎日を無為に過ごしていることが原因では-。きょう1日をもっと懸命に。踏まれても抜かれても、再び根を張り茎を伸ばす野草の姿にならって。

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