消防職員、団員向けに資質向上につながる情報発信を行っている「消防戦術探究会」(伊那市高遠町、坂入佑太代表)は9日、地震や土砂災害の被災現場で活躍できる消防士の育成に向けたチェーンソー取り扱い訓練会を諏訪地方で初めて茅野市北山の緑の村別荘地内で実施した。全国各地の被災地で技術系災害支援活動を行ってきた多賀賢司さん(69)=同市宮川=を講師に招き、県内外から集まった消防士が災害現場を念頭に置きながらチェーンソーの扱い方を集中的に学んだ。
坂入代表(28)=諏訪市四賀=は元消防士。体調を崩して消防の仕事からは離れたが、自らの経験を日本の消防力向上に役立てたいと同会を立ち上げた。有料会員約700人、無料会員約3500人のコミュニティーを育て、SNSのフォロワーはインスタグラムで約2万人を数える。
チェーンソー訓練会は、消防の資機材として緊急車両に積載されているにもかかわらず、扱う機会が少なく、慣れていない消防士が多いことから企画。能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市で倒壊家屋のがれき撤去や救援ルートを確保する「道路啓開」を行っていた多賀さんと2月に出会い、共に作業し、消防士向け訓練会の必要性について意気投合したのがきっかけ。
9日の訓練会には地元の諏訪広域消防や県外の消防署から30~40代の消防士6人が参加した。チェーンソーの構造や被災地に即したエンジンのかけ方、切断能力を左右する目立ての重要性、安全対策などを学び、別荘地内の支障木を伐採して切断の実技訓練を行った。
実技では木の形状や伐採後の傾き具合によってチェーンソーの歯が挟まり、動かなった場合の取り出し方や挟まらずに切断する方法、見極め方などを学び、訓練を重ねることで感覚を身に付けた。多賀さんは「被災地では倒壊家屋の柱や梁を切断しなければならない場面もある。家の構造を理解し、切断しようとする角材にどのような力が加わっているかをしっかり把握することが求められる。分からずに切るのは危険」と伝えた。
参加した諏訪広域消防の小池一輝さん(32)は「職場の訓練だけでは十分とはいえない。より災害現場に近い形で何回も訓練し、被災地での対応力を高めたい」と語った。群馬県の太田市消防の砂永直哉さん(43)は「資機材にチェーンソーはあるが、歯が挟まった時に使える道具がない。訓練会で学んだ知識を職場で共有したい」と振り返った。坂入代表は「チェーンソーは被災地の活動で必ず使う。災害時にぶっつけ本番で臨むということがないように何度も使って感覚を身に付けておくことが大事」と話した。訓練会は10日も同所で行う。
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