過去の日記を基にした「おじいちゃんの日記」を出版した矢島さん

戦争とは何か後世に伝える 矢島さん自費出版

2024/05/05 06:00
文化

激動の昭和を生きた元高校教諭の矢島良幸さん(96)=辰野町宮木=が、戦中戦後の自らの人生の一部をまとめた「おじいちゃんの日記」を自費出版した。若いころから書きつづってきた膨大な日記や記録を編集し、戦時下で送った学生時代や戦後の食料難で過ごした青春時代などの様子をつづった自分史。「人間が人間でなくなる戦争は最もいとわしい。この本が戦争とは何かを考えるきっかけになれば」と話している。

 

矢島さんは旧制松本中(現松本深志高)を卒業し、1年間代用教員を務めた後、國學院大學に入学。大学卒業後は横浜の中学校で4年間教師を務め、その後、長野に戻って高校教師として勤務。上伊那農業高や岡谷南高、諏訪清陵高などに勤務し、下諏訪向陽高を最後に退職。その後、辰野町教育委員や町公民館長などを歴任した。

 

8年前からは、地元中学校の平和教育で戦争体験を語り継いでいるという矢島さん。日記の出版は、さまざまな機会で戦争について語り続ける姿を見てきた長男・岐さんの「書籍としてもっと多くの人の記憶に残すべき」という言葉が後押ししたという。

 

日記は、松本中在学中に名古屋市内の工場に勤労動員された1945年2月から始まり、戦争が激化する中で米軍の空襲におびえる様子が記されている。その後、代用教員として現在の辰野西小に勤務していた8月15日に終戦を迎えた時の心の揺れ動きもつづられている。

 

このほか、戦後の食料難で強くたくましく生きた青春時代を振り返り、何もない時代で見つけた喜びや幸せ、楽しみなどをつづっている。また妻と交わした交換日記、戦時下から平和な時代へと移り変わったころの妻の出産日記も掲載した。

 

「人生とは不思議なもの。思いもよらない日々の連続。長生きするのも悪くない」と話す矢島さん。教員時代は決して戦争体験を話さなかったといい、「なぜ今になって戦争を語るのか自分でも分からないが、いま過去の歴史に目覚め、戦争とはいかにいとわしいものかを伝えなくては」と話している。

 

日記は町内の中学校や高校、大学、町図書館に寄贈。26日午後1時30分からは、有志による出版記念の会を町民会館で開催。当日は矢島さんの講演もある。記念の会に関する問い合わせは田中さん(電話080・6932・5981)へ。

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