飯島町南仲町出身で、駒ケ根市に工場を持つフルートメーカー「ミヤザワフルート製造」(本社・東京都豊島区)の創業者、宮澤正さん(81)=埼玉県新座市=は、「人との出会い」をキーワードに、楽器作りにまい進した自らの音楽人生と技術革新へのこだわりなどについて豊富なエピソードを交えて記した自叙伝『55年にわたるフルートづくり―そのすべての原点は”人との出会い”』をアルソ出版から刊行した。会社創立から55年、世界の演奏家から愛されるフルートを作って普及させるまでにどんな思いや苦労、そして運命的な出会いがあったのか―。その秘密が本人の言葉で明かされる。
■1年かかり完成
同書の刊行は、宮澤さんが2022年10月に80歳を迎えたのを機に、今まで出会って自分を支えてくれた人たちに恩返しをしたいと思い立ったのがきっかけ。「人生で多くの素晴らしい人たちと出会えた。その人たちがいなかったら、今ここに私はいない」と宮澤さん。人生の転機に自分を良い方向に導いてくれた恩人たちを思い浮かべながらも「皆さんに何の恩返しもできていない。そのことが気がかりだった」という。
年月は流れ、対象者の多くが鬼籍に。感謝の伝え方について考えあぐねていたところ、自分の人生を本にして、恩人の家族や縁者に寄贈したらというアドバイスを知人から受けたという。
音楽や楽器作りがもたらした「縁」と、音楽の素晴らしさを後世に伝えたい―。そう決意した宮澤さんは知人が会長を務める出版社を頼って同書の制作に着手。取材者のインタビューに応じて歩んできた道のりを振り返り、その時々の体験や自分の思いを打ち明けたという。ほぼ1年がかりで1冊の本にまとまり、今年2月に完成した。
同書は宮澤さんの生い立ちから会社の創立、事業の展開、海外進出、技術革新、音楽やフルートづくりへの宮澤さんの思いなどについて全11章で詳述。ミヤザワフルートを愛用している国内外のアーティストから寄せられたコメントや商品ラインナップも添付している。また海外の知人や関係者向けに英語の抄訳も付けた。
■飯島中で吹奏楽
同書によると、宮澤さんは6歳の時に母を結核で亡くし、幼少期から複雑な家庭環境で育った。
今に至る音楽との関係の原点は、飯島中学校入学の年(1955年)に創設された吹奏楽部。音楽教師からメンバーの一人に指名され、やむなく入部したという。当時の宮澤さんは「(音楽に)まったく興味がなかった」「むしろ嫌いだった」。なぜ自分に白羽の矢が立ったのか分からなかったが、「暗くて友だちの一人もいない私を」「音楽でもやらせたら明るくなるかも、と思って指名してくれたのかもしません」と教師の気持ちを推し量る。
部活ではクラリネットを任され、昼夜を分かたず練習に没頭するうちに友人ができ、無口で暗かった少年がうそのように明るくなった。「ブラスバンドを始めるともう毎日が楽しくてね」。同書の中で宮澤さんは「自分を変えてくれた人」として何度も教師の名前を挙げ、音楽にめぐり合せてくれた恩に報いている。
■恩人などに配布
宮澤さんはその後、身一つで上京し、飯島中に派遣されていた楽器指導者のつてで管楽器メーカー「日本管楽器」(ニッカン)に入社。1969年に26歳で宮澤管楽器製作所(ミヤザワフルート製造の前身)を立ち上げ、楽器業界に参入することになる。
A5判、288ページ。価格は2970円(税込み)。初版は300部印刷し、恩人やその家族、取引先などに配布している。通販サイトのアマゾンでも販売している。宮澤さんは「こういう人生もあるのかと思っていただければ。音楽をやる人が1人でも増えればうれしい」と話している。
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