池上秀畝が故郷のために手掛けた作品が並ぶ展覧会場=伊那市創造館

「伊那の三筆」秀畝展 県文、創造館でも

2024/04/01 06:00
文化

 伊那市高遠町出身の日本画家、池上秀畝(1874~1944年)の生誕150年を記念した展覧会が同市西町の県伊那文化会館、伊那市創造館でそれぞれ開かれている。市内外6会場で展開する企画展の一環。「伊那の三筆」と称賛された画家の魅力に迫りつつ、生涯愛し続けた故郷への思いも伝えている。展覧会は同文化会館が5月12日、創造館が同27日まで。

 

 秀畝は花鳥画家の荒木寛畝に師事した後、中央画壇で活躍。一連の展覧会は近代日本画壇を代表する秀畝の画業を顕彰し、業績や作品を紹介するため企画した。

 

 同文化会館では「ただ絵が好きで好きで」と題し、市内の個人宅などで所蔵されている掛け軸やびょうぶなど約40点を展示。秀畝の作品は多様な角度から鳥の姿を捉えたり、刺しゅうをする女性の手元と糸を緻密に描いたりなど繊細な描写で、師の寛畝から写生の重要性を説かれた影響がうかがえるという。

 

 同館学芸員の木内真由美さんは「細かい描写から絵が好きでたまらなかったことが伝わってくる。一つ一つの作品に施された工夫を見てほしい」と呼び掛けている。

 

 創造館は「伊那・高遠との交流を中心に」をテーマに、秀畝と同郷で交流のあった3歳年下の茶商・伊藤巨摩治郎(1962年没)との縁に着目。秀畝が巨摩治郎の父母の姿を描いたり、巨摩治郎が娘の伊那尋常小学校(現伊那小)卒業記念に秀畝の作品を学校に寄贈したりと、故郷の仲間との関わりがあったことを解説している。

 

 上伊那図書館(現伊那市創造館)に寄贈した富士山や三保の松原のびょうぶを約1日半で描き上げたエピソードも作品とともに紹介。同館は「生涯伊那や高遠を愛し続けたことが分かる。その思いを見てほしい」としている。

 

 県伊那文化会館は入館料一般500円、大学生・75歳以上が300円、高校生以下または18歳未満無料。月曜と祝日の翌日休館。問い合わせは同館(電話0265・73・8822)へ。伊那市創造館は入場無料。火曜休館。問い合わせは同館(同72・6220)へ。

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