富士見町の井戸尻考古館の今年度入館者が25年ぶりに1万人を超えた。コロナ禍の影響で休館や来館者減少が続いたが、展示品を解説する動画配信などで関心が広がり個人客が増加。コロナ前以上に注目が集まったことに同館は達成感を感じており、「生き方や自然との向き合い方のヒントがある」という縄文文化の発信により一層の力を入れていく。
同館は1974年に開館。80年代は年間2万5000人超が来館したが、小中学生の団体客の減少で2011年には5000人台まで落ち込んだ。18年度は国立博物館への出品などで知名度が上がり、16年ぶりに7000人を突破。翌年も好調で”縄文ブーム”の到来かと思われたが、コロナ禍によって20年度から再び減少した。
休館や展示中止が続く時期に同館は、公式エックス(旧ツイッター)の開設、住民有志でつくる「井戸尻応援団」の公式ユーチューブで情報発信を始めた。小松隆史館長や副島蔵人学芸員らによる展示品解説、縄文収穫祭の無観客配信などを実施。遺跡を発掘する様子や土器の模様の由来といった細かな解説が評判を集め、再生回数が伸びるにつれて関心の輪が広がった。
成果が出始めたのは昨年度。前年度から約2500人増の9051人が来館し、手ごたえを感じたという。「個人客が伸び、情報が届いていると実感した」と小松館長が振り返るように、画面で知った展示品を実際に見ようと今年度もさらに来館者が増加している。
1万人到達は23日の夕方で、歴史好きだという下諏訪町の高校生が来館して節目を迎えた。小松館長は「職員の努力や周りの皆さんの協力で達成できた意味のある1万人」と感謝し、「多くの人の関心が縄文に向いている。親しみやすさのある伝え方を考え、興味がそそられる動画を配信したい」と意気込んでいる。
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