2025年1月31日付

2025/01/31 08:00
八面観

ホロコーストは作り話だ。実際に大虐殺は起きていない―。ヨーロッパやアメリカなどの若者を中心に、史実の否定論や誤情報がSNSで広がっているという。600万人とされる犠牲者も「誇張されている」と考える若者が増えているそうだ▼昨年は東京都や兵庫県の知事選、衆院選と、SNSや動画サイトが選挙に大きな影響を与えた。虚実ないまぜの情報が大量に拡散して短い期間に世論を形成し、事実がゆがめられていく。SNSが本格的に牙をむいてきたような危機感を抱く▼「表現の自由」を理由に、米メタ(旧フェイスブック)は外部機関によるファクトチェックを廃止するなど投稿管理を緩和し始めた。人工知能(AI)を使って、誤情報や誹謗中傷の意図的な拡散を狙う動きもあるという。SNSは、もはや人の命をも奪う▼本紙でコラム「ネットと生きる極意」を連載するセーフティーネット総合研究所の南澤信之所長は、AIの普及もあり偽情報などのリスクが高まるとし、危険性を意識した上で利用する対応力や、結果だけでなく過程を大切にする「人間力」の再生が求められると指摘する▼今年は戦後80年の節目。時間は経過したが、戦争は決して過去のものではなく、虚像でもない。悲劇を繰り返さないために何をすべきか。戦争体験者の声を聞く時間が限られる中、実在する史実にじかに向き合い、受け継ぐ姿勢を大切にしたい。

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