蛇にはどんなイメージがあるだろうか。慣用句などではあまりよろしくない。「蛇蝎のごとく」。大変な嫌われようだ。「鬼が出るか蛇が出るか」。どちらが出ても…。余計なことをして災難を招けば「やぶ蛇」である▼巳年の始まりに何とも縁起の悪い話題から入って申し訳ない。もちろん、蛇の神秘性は畏怖だけでなく畏敬の念も抱かせよう。古来より弁財天の使いや化身とされており、金運の御利益は有名な話。湿地を好む性質から水神としてあがめられる伝承も多く存在する▼蛇の崇拝は世界各地でも。脱皮は生まれ変わりを、自らの尾をくわえ輪になる姿(ウロボロス)は循環を暗示。復活や再生、不老長寿など無限の生命力を連想させる。古代エジプトでは王権の象徴として敬われ、マヤ文明では信仰の対象として祭られていたようだ▼医療のシンボルとしても知られ、日本を含む各国の救急車や世界保健機関(WHO)では蛇が絡みつく杖のマークを採用。ギリシャ神話に登場する医神アスクレピオスに由来するもので、世界中の医療機関で広く用いられている。縁起が悪いだなんてとんでもない▼明けて新春。日本は終戦から80年の節目を迎える。しかし世界を見渡せばいまだ争いが尽きない。漢字の「巳」は胎児の象形が成り立ちともいわれ、「未来」や「家族平和」などの意味もあるとか。本年がそんな字にあやかった1年になればと願う。
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