マインドコントロールという言葉は軽々しく使いたくないが、後を絶たない詐欺被害からはまさに心を操られているように見える。ちょっと考えればおかしいと思えることもあるのに▼最近の事例。南信地方の金融機関窓口を訪れた70代男性。現金50万円を振り込みたいと言う。理由を聞くと出会い系サイトで知り合った女性から指定の口座に金を振り込むようメッセージが送られてきたためと説明した。職員は詐欺を疑い、警察に通報した。いわゆるロマンス詐欺とみられる▼実はこの男性、この１週間ほど前にも窓口を訪れていた。そのときはローンの申し込みと告げていたが、不審な点があり、職員が警察に相談するよう促していた。だが、日を改めて再び振り込みに訪れたのだった。警察の説得で被害は免れたが、男性はすっかり信じ込んでいた様子だったという▼ネット上のやりとりだけでここまで信用させてしまう詐欺師のだましのテクニックには驚くばかり。詐欺がなかなかなくならない裏返しにも見える。県警のまとめでは11月末現在のＳＮＳ型ロマンス詐欺は70件、被害額は６億４０００万円余に上る。前年同期より50件、４億２０００万円余増えている▼金融機関関係者は言う。たまたま窓口で防げた場合はいいが、そうでないケースもあるだろう。詐欺は手を変え品を変えしのび寄る。「自分は大丈夫」そう過信しないことが大切になる。