江戸時代から続く宮田村の夏祭り、津島神社祇園祭宵祭り(7月20日)に向けて、主役となる「みこし」の製作が進んでいる。祭りで豪快に打ち壊される「暴れみこし」。ベテラン大工の高齢化が進む中で、伊那谷を代表する奇祭の伝統を後世に残すために、”技術の継承”に向けた新たな取り組みも始まっている。
祇園祭のために毎年、新しく作られるみこしは商店街を勇壮に練り歩いた後、津島神社境内の石段の上から氏子たちが待つ地面へと豪快に投げ落とされる。中央の真柱(しんばしら)1本になるまで何度もたたき付けられ、祭りのクライマックスを迎える。
今年のみこし作りは12日に始まった。コロナ禍前の2019年にみこし製作を手掛けた村内の大工加藤勉さん(74)と新井勉さん(73)に加えて、”最年少”の新井正人さん(64)が担当する。初めてみこし製作を担う新井正人さんは「何年もみこしをかついできたが、作るとなるとまた気持ちが違う。わくわくしている」。60年以上にわたってみこし製作に携わった故加藤政義さんから技術を受け継いだ、太田善太郎さん(73)が棟梁として作り方を指導している。
みこしは高さ1・7メートル、幅1・3メートルで、担ぎ棒を含めると長さは4メートル。国産ヒノキを使用し、重さは200キロ。製作期間は2週間ほどで、26日ごろには完成する見込みだ。
大工の高齢化に伴い、みこしの製作技術の継承が昨今の課題。地元の町区氏子総代会は昨年から、地元企業のタカノに依頼してみこしの各部材の木製ひな型「型板」の図面の電子データ化を進めている。長年使用して古くなった型板の更新と、みこし作りの技術を後世につなぐための取り組み。村内の大工にはみこし製作の見学も呼び掛けた。
太田さんは「一番の願いはみこし作りの継承。みこしがメインの祭りなので、伝えていかないと祭り自体ができなくなる」と危機感を抱く。その一方で「新しい職人が来てくれたり、図面の3次元CAD(コンピューター利用設計)を取ってくれたりと協力してくれる人たちがいる。有り難い」と感謝を口にする。
新井正人さんも「まだまだ何年も続いてほしい祭り。気持ちを込めて作りたい」と気合十分。伝統をつなぐため、後に続く大工が現れることを願いつつ、祭りの華となるみこしの製作に励んでいる。
みこしは祇園祭宵祭りで神社に戻った午後10時すぎ、境内の石段から男衆に投げ落とされ、粉々になるまで破壊される。
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