「差別は病気よりも痛いのです」。こう訴える、ルワンダ出身で順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター教授のフランソワ・ニヨンサバさんの講演を聞いた。感染症治療の研究に心血を注ぐニヨンサバさんの言葉。心に刻まれた▼ニヨンサバさんは映像を紹介した。男性が「私はエイズです。ハグしてください」と書いた紙を広場で掲げる。遠巻きにしていた人々はやがて1人また1人と近づき、男性を優しく抱いた。男性は泣き出した。「なぜ泣き出したのでしょうか。ずっと差別されているからです。ハグされるとは思っていなかったんです」と解説した▼中国の医科大学を卒業後、来日して26年。こうも訴えた。「日本でも差別はあります」。耳が痛い。コロナがまん延し始めた頃、職員が感染した金融機関の店舗ガラスが割られたり、県外ナンバー車が眉をひそめられたりした▼こうした行為や心情は一種異様な一時期の特異なものだったのか。多様化がいわれるが、自分と異なる多様性を受け入れているか。心には常に偏見が潜むのではないか。自問自答を繰り返している▼ニヨンサバさんの来日を支えたのは中国で知り合った日本人女子留学生の両親だった。家に迎え、同大学院に合格したニヨンサバさんの学費を払ったという。「ごく普通の日本人。娘の友人というだけで」。こんな人たちもいるんだと、救われた気持ちになった。
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