元県立高校教諭で東京都立大学客員教授の宮下与兵衛さん(71)=伊那市西箕輪=が、子どもや若者の主権者教育について研究した本「若者とともに~地域をつくる 学校を変える 社会・政治を変える~」(かもがわ出版)を刊行した。日本の若者の投票率の低さに着目し、現代の若者の政治意識を分析。欧米や国内の先行事例を紹介し、規律教育や新自由主義の影響に触れながら、学校や地域で自立した市民を育てる必要性と方策を説いている。
高校教諭を37年間、定年退職後に大学教員を10年間勤める宮下さん。専門は教育学。辰野高校の教諭時代には生徒が学校運営に参加できる場をつくり、生徒とともに校則の改善などを進めてきた。
著書は8章構成で、日本の若者の政治参加への意識の低さをデータなどで示し、社会を変えられないと思う背景を分析。宮下さんが訪問したアメリカ・シカゴの学校など世界の先行事例を挙げたほか、辰野高校をはじめ、国内で積極的に若者を主権者に育てている学校や自治体、職場を紹介。職場や地域での若者への接し方も助言している。
宮下さんによると、2016年の参院選から選挙権が20歳以上から18歳以上に引き下げられたが、20代の投票率は3割台前半で欧米の半分程度にとどまる。背景として、管理的な学校教育による同調圧力で「意見を言わない・議論できない」という状況や、新自由主義による個人主義の影響を指摘。さらに15年までは高校生のデモなどの政治活動や学校の政治教育が規制されていたことに加え、最近まで子どもの権利条約を保障してこなかったことも影響するとした。
例えば、生徒が校則を改善しようと活動しても要求が拒否されることが多く、挫折経験や無力感を与えて自己肯定感を下げ、先進国では最低になっているという。主権者意識を向上していくには、子どもの権利条約に明記される「子どもの意見表明権」を保障し、生徒が学校運営や地域づくりに参加して学校や社会を変える体験が必要とする。
また、1980年代から導入された新自由主義では競争や自己責任を強いたため、若者に疎外感やドロップアウト、社会や組織を冷笑する見方を広げ、投票率の急落につながったとみる。「努力しても報われない」「煩わしいことを避け、平穏に暮らしたい」という若者が増加した。
宮下さんは「若者が生きるのに冷たく苦しい社会をつくり、莫大(ばくだい)な国の借金をつくったのは大人。私たちの責任で社会や政治を変えなくてはならないが、若者と協同しないと変えられない」とまとめる。地域活動の後継者不足で困っている人にも読んでほしい-と呼び掛けている。
定価1800円。全国の書店で販売している。
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