斜面災害について研究する京都大学防災研究所斜面未災学研究センターの松澤真准教授(40)=防災地質学=や森林、防災に詳しい元信州大学農学部教授の山寺喜成さんらが諏訪市豊田の有賀区とともに2018年に行った土砂災害の危険性を調べる住民参加型の調査研究の成果を論文にまとめた。この論文が学会誌に掲載された。山中で住民とともに行った土層構造調査などの取り組みは同区独自のハザードマップに反映され、住民の防災意識の高揚や区の防災対策に役立てられている。
松澤准教授によると、地区防災計画は土砂災害特別警戒区域、同警戒区域を基準に災害の危険性を検討していることが多いが、全国統一の基準のため、地域性が考慮されていない場合が少なくないという。土砂災害は崩壊斜面の隣の斜面は無傷となるなど地震災害に比べて局所性が高く、地域全体として危機感を共有しづらい側面がある。「斜面ごと、谷ごとの個別対応性が必要」と指摘する。
同区は2006年7月豪雨で土砂災害警戒区域以外の農地が崩壊したことがあり、防災意識は高い。17年に当時の小泉悦夫区長が長年親交のあった山寺さんに地域の土砂災害について相談したのがきっかけで、住民参加型の土砂災害ハザードマップ製作の取り組みが始まった。
調査研究ではまず国土地理院が公表している5メートル間隔の標高データを用い、傾斜や地面のへこみ具合を基に斜面の表層崩壊が発生する可能性が高い場所を抽出した。同区と境を接する岡谷市湊を含めた西山地域の斜面を調べたところ、表層崩壊危険個所として計205カ所を抽出した。
さらに住民からの要望が高かった諏訪湖サービスエリア上部の有賀区側にあり、集落に大きな被害が出る可能性がある神子沢を対象に詳細調査を実施した。土層の強度や構造を調べる機器を使い、測定、推定結果を基に土石流シミュレーションを行った。崩壊の可能性が高い場所が尾根付近と中腹に計2カ所あることが推定され、このうち、中規模崩壊の可能性を指摘した尾根付近の崩壊土砂量は3500立方メートルと見込んだ。流れ出た土砂は諏訪湖に流れ込む新川河口付近にまで達すると想定された。
区独自のハザードマップを作成し、住民説明会を行ったほか、アンケートを実施した。土砂災害の危険性について従来のハザードマップよりも分かりやすく、説明会が今後の適切な避難行動につながると感じた人がいずれも7割を超えた。松澤准教授は同区との調査について「自分たちが住む地形、地質の特徴について住民たちが自ら現地に足を運び、身を持って体験したことを反映したハザードマップは、地域の土砂災害について住民理解を高めることにつながった」と振り返った。
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