林さんの鳥類標本 国立科学博物館に寄贈へ

2024/05/01 06:00
社会

日本野鳥の会諏訪支部名誉支部長の林正敏さん(80)=岡谷市川岸東=は、自宅に45年間所蔵してきた鳥類標本など約3000点を国立科学博物館(茨城県つくば市)に寄贈する。寄贈を前に6月8日からは八ケ岳美術館原村歴史民俗資料館で緊急展示する。林さんは「諏訪地方で標本が見られる最後の機会。多くの人に見てほしい」と話している。

国立科学博物館に寄贈する鳥類標本の一部を手にする林正敏さん

寄贈品は鳥類の剥製が242種の2391点、小型獣類の剥製が12種の59点、鳥卵の標本550点、生態画の掛け軸「信濃稀産鳥類図」1点など。明治、大正期の国の農商務省時代に、主に鳥獣行政の一環として食性調査に役立てるため、鳥獣調査員の立場で鳥を捕獲した松本市の高山鼎二と子息の忠四朗と、上諏訪町長を務め高山蝶の研究をし、諏訪湖の鳥も調べていた金井汲治と、子息で戦後初の諏訪市長を務めた金井清の四氏(いずれも故人)によるもので、長野県自然環境保全審議会の委員をしていた日本野鳥の会の初代諏訪支部長の小平萬栄さんが、同じ審議会で知り合った松本市の高山忠四朗から、自宅で保存する標本の保管先について相談され、標本類に強い関心があった林さんに寄贈された。金井標本は、諏訪教育会館で博物資料として保管されてきたもので、高山標本が贈られた後年に同じく林さんが引き取った。

 

1800年代の古い標本や1893年に上諏訪町湯の脇で採集したオオワシ、清氏が中国北京で入手し父に送り届けた巨大なクロハゲワシなど、国内外の標本670点もある。標本は一般展示用に作られた剥製ではなく、学術に役立つよう仮剥製にしたもので、羽毛の色彩は今も色あせていない。国の天然記念物や絶滅危惧種といった貴重な種類も含まれ、ごく限られた鳥しか捕獲ができない現在では、二度と入手ができないものばかりだという。

 

林さんは「高齢で標本の散逸が心配で寄贈を決めた。標本は過去から未来への地球の宝物。国の財産として有効に活用してほしい」と願っている。

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