大相撲で史上初の外国出身横綱となった曙太郎さんが4月上旬、54歳で亡くなった。「日本人以上に日本人らしい」とも言われた曙さん。2000年9月には、下諏訪町の有志に招かれ、同町の県花田養護学校を訪問し、子どもたちと交流して元気づけた。当時、来校実現に携わった同町スポーツ協会相撲部部長の大野栄作さん(82)=同町=に話を聞くと、多くの人に慕われた誠実な人柄をうかがい知ることができた。
来校は、同町の有志でつくる「福花会」(西禎康会長)が、同校の子どもたちの「本物の力士が見てみたい」という願いをかなえようと、日本相撲協会を通じて約1年がかりで実現させた。「ふれあい相撲・花田場所」と銘打ち、曙さんのほか、当時の高砂一門から師匠の東関親方(元・高見山)、錦戸親方(元・水戸泉)、幕内の闘牙関らが訪れた。
子どもたちは車いすで講堂に集まり、力士らの櫓太鼓や髪結いを見た後、力士と「じゃんけん相撲」をして盛り上がった。間近で見る力士の大きさに驚きつつ、交流を喜んだ。
その際、曙さんは「これで全員か」と教員に問いかけ、「障がいが重く、車いすに乗れなくてここに来れなかった子もいる」と聞くと、その子たちのもとに向かった。ベット上の子どもに「俺の体に触ってパワーをもらって元気になって」と呼び掛け、自身の体に触れさせたという。大野さんは「一番印象に残っている。子どもたちも喜んだし、私もうれしかった」と話す。
曙さんらは、来校に先立ち同町の諏訪大社下社秋宮を参拝。その後、秋宮の八幡山土俵で相撲をとったほか、少年相撲教室も開いて子どもたちと一緒に相撲をとった。土俵の周りには人気力士らを一目見ようと、多くの人が集まった。
曙さんは、次の十一月場所(九州場所)で11回目の優勝を果たす。しかし、その翌場所の01年初場所を両膝のけがで全休し、場所後に現役を引退した。
「曙さんは神さまがいる諏訪大社に参拝できて良かったと喜んでいた。日本の武士道をよく学び、感動する人なんだと思った」と大野さん。来校を「子どもたちやその保護者、多くの人が喜んでくれた」と感謝し、「土俵上の力強い印象もあるが、周りの人への感謝の気持ちを持つ優しい人という印象だった。年齢を思うとさみしいね」と故人を惜しんだ。
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