箕輪町の有志でつくる箕輪地域文化研究会(柴登巳夫会長)は、町内の伝統文化や文化財全般をまとめた書籍「伝えていきたい箕輪の文化~過去に学び未来を拓く~」を発行した。民間信仰や民俗行事、芸能などの由来や歴史、課題などを5章構成でまとめた。文章や写真のほか、歌や映像を視聴できる二次元コードを掲載。「既に消滅した伝統行事もあり、広く魅力を伝えて文化を継承できれば」と期待している。
同研究会はNPO法人みのわ芸術文化協会(同町)の下部組織として2018年に発足した。町教育長や同協会理事長を歴任した故大槻武治さんらが発起人となり、「地域文化を活性化し、住み心地のよい町にしたい」と町内22人で活動を開始。約6年かけて資料収集やアンケート、聞き取り調査などで現状を把握してきた。
オールカラーで全254ページ。1章は江戸時代から伝承される「古田人形芝居」や「南宮神社の山車飾り」など八つの町指定無形文化財について紹介。2章は民間信仰、民俗行事などを取り上げた。
3章には祈年祭や天神様など伝統的な祭りから、赤そば花まつりやみのわ祭りなど現代の祭りまでを記載。4章ではかつて盛んに演じられた「箕輪歌舞伎」や「長岡囃子」など、5章では暮らしにまつわる水路の歴史やイノシシよけの土手遺構などを紹介している。
神事の作法や必要な道具、区による違いなども詳しく載せたほか、保存会の高齢化にも言及。二次元コードからは複数の神事の様子や町内各校の校歌などが鑑賞できる。限られた地区内だけで行っていて存続が危ぶまれる文化もあるといい、「地域の絆が希薄になって先人が大切にしてきた生き方が失われつつある。精神だけでも大切にしていかなければいけない」(同研究会)との思いも込めた。
刊行委員長を務めた唐澤好三さん(74)=同町中原=は「町の文化のありようや魅力を知ってほしい。(その魅力に)共鳴した人が新しいイベントを興すなどして文化の継承や地域の活性化につながれば」と話していた。
表紙や中扉には切り絵作家の浦野栄一さん=伊那市=の作品を採用した。県地域発元気づくり支援金や町内企業の協賛を受けて全300部を制作。上伊那地域の各市町村図書館などで閲覧できる。
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